高市早苗首相は22日、自身の公設第1秘書である木下剛志氏の陳述書を、衆院予算委員会の坂本哲志委員長に提出した。疑惑は、自民党総裁選や衆院選で他候補を中傷する動画の作成・SNS投稿に首相陣営が関わったとされるものだ。
陳述書は同日の衆院予算委理事懇談会で示された。木下氏は「他の候補者を誹謗中傷するような動画を作成・発信したり、第三者に依頼したこともない」として、関与を全面的に否定した。第三者に依頼して作成させたとされる動画についても、「一度も見たことがなく、存在するかどうかも承知していない」と説明している。
疑惑の中心には、首相の地元事務所を仕切る木下氏が、昨年10月の自民党総裁選などで「対立候補の中傷動画を作成してSNSに投稿した」とされる報道がある。さらに、サナエトークンの開発責任者とされる松井健氏と木下氏の関係を巡り、今国会で野党の追及が続いていた。
木下氏は、松井氏との関係について、「顔と名前にはっきりとした記憶のない方々の一人であり、会ったこともない」と述べ、首相には「面識のない方だ」と報告していたと主張した。一方で、昨年10月の自民党総裁選前、信頼する学者から紹介されたSNS関係に精通する人物らと、短時間のオンライン会議を行った可能性は認めた。
その会議について木下氏は、出席者が有名政治家のSNS戦略に関わった経験を持つと聞いていたため、総裁選の情勢について意見交換したのだろうと振り返った。ただし、「やりとりの詳細は記憶していない」とし、「特に参考になるような話を聞くことはできなかった」と記した。その後、取材や報道を通じて、相手が「松井氏」であったと徐々に思い当たるようになったとしている。
動画作成に関するメッセージを松井氏に送ったとされる点については、「考えられる限りの確認を行った結果、私の側には記録は見つからないし、記憶もない」とした。公開された別のオンライン会議の音声についても、「私の声に似ているとは思うが、確証を持てない」と説明している。衆院選に関しても、動画の作成依頼や、作成への謝意を伝えるようなメールなどを送ったとする情報を否定した。
総裁選の広報については、この人物とは関係のない企業3社と契約を結んだと説明した。木下氏は、動画の作成・発信を依頼したことはないとの立場を重ねて示している。
もう一つの焦点である「SANAE TOKEN」についても、陳述書は関与を否定した。サナエトークンは、高市首相の名前が入った仮想通貨、暗号資産とされる。木下氏は、開発者側から事前に説明を受けたことはなく、承認したこともないと述べた。
暗号資産を巡っては、松井氏が関わる業者側とのやりとりの中で、おそらく2月下旬に「サナエトークン」という言葉を聞いたと説明している。ただし木下氏は、高市内閣や自民党を応援するプロジェクトに関連したアプリ内でのポイントの名前だと認識しており、「暗号資産との説明は一切なかった」と記した。
陳述書の提出に至った背景には、野党側の参考人招致要求がある。野党は木下氏の参考人招致を求めたが、与党は応じなかった。首相は6月22日の予算委で、木下氏の陳述書提出を質問への答弁に代えたいと述べていた。
与野党は、24日に衆院予算委で首相が出席する集中審議を開くことで合意した。集中審議は3時間の予定で、陳述書の内容を巡る議論が続く見通しだ。野党筆頭理事の長妻昭氏は、木下氏の参考人招致と閉会後の集中審議の開催を訴えている。
関連する論点としては、疑惑の解明にはまだ距離があるとの見方や、「虚偽答弁」か「世論操作」かを問う議論、首相発言の変化、支持率回復への影響なども取り上げられている。首相が秘書の音声かどうかについて断言を避けた発言や、予算委で陳述書提出を提案した対応も、これまでの経緯の一部となっている。
首相側は、動画作成や暗号資産への関与を陳述書で否定した。ただ、野党は参考人招致を求め続けており、24日の集中審議で説明の整合性が改めて問われることになる。
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